曲物の作り方

花野屋の曲物は本店に隣接した工場で作られています。

元々工場は宿場店の裏にありましたが、機械の騒音や粉塵に関して近隣に配慮し、1990年に国道にある本店へ工場を移しました。略式ではありますが、合わせ小判弁当を例に曲物の作り方をご紹介します。


曲物の作り方1.側板の作成

節のない、目の詰んだ木曽ヒノキを材料として選定し、薄板を挽きます。
これが曲がる側板の材料となります。厚みと寸法に気を配り、一枚一枚丁寧に仕上げていきます

材料によって厚みが不均一だと、曲げたときに円周が変わってしまうため、最後の行程で板がはまらなかったり、緩すぎて隙間ができる原因になります。


曲物の作り方2.キメかき

側板は、曲げてから約5cm~6cmののりしろで重ね合わせて閉じますが、そのまま閉じると合わせ目の厚みが倍になってしまうため、この段階で合わせ目をそれぞれ斜めに削り、厚くならないようにしておきます。
合わせ目のことを“キメ”といい、キメを削ることをキメかきといいます。

完成した製品を上から撮った写真ですが、赤い点線の楕円で囲まれた部分がキメの合わせ目部分になります。
キメが薄すぎると、曲げて合わせたときに強度不足からこの部分が外側へ膨らみ、逆に厚すぎるとカーブが美しく仕上がりません。


曲物の作り方3.側板を煮る

特製のトタン容器にお湯をはり、キメをかいた側板を入れます。
板が浮かないように上から板とおもりでしっかりとお湯に沈め、 約80度のお湯で40分間煮ます。
ヒノキの香りが工房いっぱいに広がります。


曲物の作り方4.曲げ

側板をお湯から出し、「ほた」という道具に板をはめて、一気に曲げます。
この曲げ作業で曲物の形が決定します。

大きさの違う「ほた」を使い分けて身と蓋の側板を曲げていきます。写真は合わせ小判弁当(中)の蓋を曲げているところです。途中で力を抜いたりすると、形が歪んでしまいます。
歪んでしまうと曲物の身と蓋が合わなかったり、不格好になってしまいます。


曲物の作り方5.乾燥

曲げた板は「ほた」からはずし、木ばさみで挟んで「くち」で留めます。
この木ばさみは先代から使っている大切な道具です。

「木ばさみ」と「くち」で合わせ目を固定して一昼夜かけて乾燥させます。

乾燥してしまえば木ばさみを取っても形が崩れません。


曲物の作り方6.閉じ

合わせ目を糊付けして閉じます。

糊が乾いたら桜の皮で縫います。
最初に「木さし」という道具を使って、桜の皮が通る穴を空けていきます。

桜の皮は道具で鞣し、薄くしてから細長く切って使います。
木さしで空けた穴に一つ一つ手作業で桜の皮を通し、縫っていきます。

力を入れすぎると切れてしまうので、力の加減に気をつけます。神経を使う細かい作業です。


曲物の作り方7.蓋板・底板をはめる

完成した側板の縁に糊を付け、楕円に切った板をはめます。

板は目の詰んだ木曽サワラを選んで、既定の厚さに仕上げて使います。
写真は小判弁当なので、小判型に切ったものをはめます。
(写真右上に少し見えている板です)
隙間無くはまらなければ製品にはなりません。


曲物の作り方8.仕上げ~白木地完成

面取りカンナとペーパーを使って面を仕上げてできあがりです。
爪などで木地を傷つけないように気をつけて仕上げていきます。

これで木地はできあがりです。
この後生漆を塗ります。


曲物の作り方9.漆塗り~製品完成

白木地に漆を塗ります。

木に刷毛を使って漆を擦り込むように塗ることから「すり漆」仕上げと言われます。
(漆を塗った後に布や紙で拭き取ることから「ふき漆」と呼ぶこともあります)
木によって艶のでないものは余分に塗って仕上げます。
写真は一回目の塗りなので、まだまだ白っぽい色をしています。
漆を塗って、漆が乾いたらペーパーで面を研いで拭き取る、という作業を4回繰り返してやっとできあがりです。

木地の仕上がりと塗りが良くなければ、いい艶は出ません。